ごく稀にですが、この画力で漫画家になれるんだなぁ…と思うような絵を描く漫画家もいます。ただし、それ以上に構成力とストーリーが素晴らしかったりします。

逆にストーリーや展開に突っ込みどころが多くて、なんだか忘れられないという漫画もあります。

例えば、デビュー作は漫画家としてまだまだ粗削りな部分がありがちです。しかし、その荒っぽさや泥臭い部分がとても印象に残る場合もあります。

何作かこなしてきて、粗削りな部分がなくなり、画力も向上していく漫画家がほとんどですが、インパクトとしてはデビュー作が一番なことがあります。

個人的に、洗練された漫画よりは、泥臭さが前面に出た漫画の方が好きです。あくまで個人的感想ですが…。

また、パッと見下手な絵でも、笑顔の描き方など部分部分が良いと、かなり印象に残ります。この絵からこんな素敵な笑顔が、または悲壮な顔が描けるのか!と漫画家の凄さの片鱗が見え隠れするのです。

デビュー作というのは、売れるまでアシスタントがつかなかったりします。ですから、連載の場合、ある程度人気が出るまで漫画家一人で描くことになります。

漫画家一人で全部仕上げるのは本当に大変な作業で、血と汗と涙の結晶が漫画に詰め込まれているのでインパクトがあるのでしょう。これはデビュー作、新人漫画家ならではのものです。

ある程度経験をこなし、アシスタントがつくことで漫画家の負担は軽減しますが、インパクトという点では少し薄れていくような気がします。絵で魅せるよりストーリーを重視するからです。

時には両方こなす凄い漫画家もいますが、かなり限られてくるでしょう。

悪い方に印象を残す漫画もあります。絵の荒さだけでなく、ストーリーの荒さが目立つものはかなり印象に残ってしまいます。

そういう漫画が売れることはないのですが、何か引っかかる、腑に落ちないものを残して終わる場合もあります。

連載打ち切りよりも、読み切りの作品でそういったものが多い傾向にあります。

読み切りは限られた枚数で話を完結させなければならないため、連載よりも話が濃くなります。

しかし、そんな短い話の中でいくつもの矛盾やツッコミどころが見つかると、読者は「!?」となり、毒にも薬にもならない漫画よりも惹きつけられていきます。

漫画家としてはあまりよろしくないことですが、読者にインパクトを与え、漫画家が育っていく過程を見られるという点ではある意味楽しみではあります。

よくできた作品でも、読者に何の印象も与えられないものもあります。原因としては恐らく、ストーリーが平坦である、キャラクターに魅力がない、あるいは伝えきれていない、といったことが考えられます。

画力不足でも、ストーリーがまとまっていなくても、ドンと心に来る一コマがあれば最強と言っても過言ではないでしょう。

良くも悪くも、読者の心に残った時点で漫画家の勝ち(?)なのです。そんな作品を残していきたいものですね。