人物を描くのは得意だけど、背景を描くのは苦手、という人は意外と多くいます。これは「パース」を意識せず描いているので、人物と背景の距離感がちぐはぐになってしまうからです。

パースとは日本語で遠近法のことです。つまり奥行や傾きのことですね。迫力のある構図を描くには重要な描画法です。

基本的なパース図は次のように描きます。なるべく定規を使ってください。

1、水平線を描く

2、水平線に垂直な線を引く

3、水平線の両端と垂直線の両端を線で結ぶ

4、ひし形が出来上がるので、その幅に合わせて建物など背景を描く

かなりザックリとした説明ですが、これがパースの基本になります。ちなみにこれは「二点透視法」と言います。

1の水平線は「アイレベル」と言い、目線の高さになります。上から見下ろす風景を描きたければ上に、見上げるように描きたければ下にアイレベルを引いてください。

2の垂直な線は、建物を描く場合角にあたります。箱を描くと分かりやすいかと思います。人物でも構いません。

3で描いた水平線と垂直線の結び目は「消失点」と言います。消失点が近ければ小さな箱が、遠ければ大きな箱が描けます。

4のひし形は、奥行きを表します。消失点に向かって幅が小さくなるので、ちょうど道の曲がり角に立って見ているように奥行きが描けます。

部屋などを描く時は、「一点透過法」を使います。これは簡単で、中心に消失点を描き、そこから放射状に線を引いていきます。これが奥行きを表します。

「三点透過法」というのもあります。これは高い建物、現代ならば高層ビル、中世ならば塔や断崖絶壁を描く時に使われます。ちょうど魚眼レンズで見たような感じになるので、存在感を出したい時に使われたりします。

その他、M点法、介線法、対角消失点法…と同じ透視法でも色々と種類があります。ここまでくると建築でのパース技法になってしまいますが、興味がある人はそこまで勉強してもいいですね。

ただ、漫画を描く際はいちいちコマの中で消失点を使うことはありません。見開きや大ゴマの場合は別ですが…。

パースは勉強すればするほど深みにハマっていきます。キッチリ描く必要はないけれど、なければ困る、といった風にです。

もう背景とか奥行きとかメンドクサイ!と思うかもしれませんが、基本を押さえておくと作画レベルがぐんと上がります。平面上に立体感が出せるからです。

なんとなく描いた背景や風景より、奥行きやバランスのとれた背景の方がずっと上手に見えますよね。

ですが、あまりパースに拘りすぎても良くありません。漫画ですから、ある程度の崩しや、人物や雰囲気に合わせた背景を描く方が重要だからです。

パースの説明を長々としてきてそれはないよ、と思われたかもしれません。しかし漫画とは一種のデフォルメですから、時にはあり得ない構図もカッコよければ良いのです。

とはいえ、パースの基本、特に一点透過法は色々と使えるので練習していて損はありません。

漫画におけるパースを解説した本や、ネット上でもパースの描き方を図解付きで説明しているところはたくさんありますので、描きながら体得していきましょう。