ストーリーの方向性を決めるのは意外と難しかったりします。ガチガチのシリアスにするか、ギャグにしてしまうか。

特にギャグ漫画はセンスが問われます。ツッコミ役のキャラクターのツッコミがパンチが弱いとただの面白くない漫画になりますし、無意味にギャグを展開させると収拾がつかなくなります。

その点、シリアスは筋が通っているので、描きやすいと言えば描きやすいですね。その代わり世界観や設定の練り込みが不可欠ですが。

シリアスがド直球のストレート球なら、ギャグはどこに跳ねるか分からない、そもそもミットに収まるかも分からないゴム球のようです。

シリアスなストーリーにギャグを散りばめる手法もありますが、これは上級者向けかと思います。どこで緩急をつけるか非常に難しいからです。ギャグ色が強いとストーリーが進まないし、シリアス色が強いとギャグを入れる余地が狭くなってしまうからです。

連載となると、この方向性が定まらなくなることがよくあります。なぜかというと、漫画家というのは人気商売で、読者のウケが悪いとすぐ打ち切られてしまうからです。

最初はシリアス路線だったのに、途中からギャグになったりスポーツものになったり迷走し始める漫画も見受けられます。人気回復しようとして、路線変更を余儀なくされたパターンですね。

ある漫画雑誌では、人気が落ちてきたらバトルを入れたらいい、というジンクスが存在します。やはり読者層によって、見たい漫画の路線が決まってくるようです。

なら最初からバトルものにしたらいいと思うかもしれませんが、作者が描きたかったものと内容が剥離してしまうという罠があります。そういう場合は雑誌を移るしかないのですが…。

路線変更にならないためにも、掲載する雑誌選びというのは大事です。少年漫画に少女漫画を、少女漫画に少年漫画を入れることができないように、読者層や雑誌のカラーというのは掲載作品に色濃く出ています。

そのため、自分の作品はどの方向性でどういったジャンルのものか知る必要があるのです。

最初から自分の好きなように描いて好きなように終わりたい、というならば、自費出版、いわゆる同人誌にするという手もあります。

同人誌というとアマチュアの作家が描いているというイメージがありますが、ある程度知名度のある漫画家が、好きなように描けるから同人誌という形式で描くこともあります。

同人誌にはオリジナル作品は売れない傾向がありますが、知名度のある漫画家には固定ファンがいるので、売れ残る心配は少ないでしょう。

とはいえ、せっかく雑誌に掲載される作品が思うように描けないのはツラいですよね。そうならないために、雑誌の路線傾向、読者層を念頭に置いて、作品の方向性をガッチリ決めたいものです。

方向性はブレなくても、そこに至る過程をどう描くか、読者層に受けるか否か、漫画家に悩みは尽きません。シリアスともギャグともとれないぼんやりとした作品を描くことだけは避けたいですね。