プロットが書けたら、次はいよいよネームです。漫画家と編集者はこれを元に話の流れや構想を話し合って確定させていきます。

ネームは下描きと違い、人物をきっちり描く必要がありません。最低限、コマ内に誰がいて、構図が分かればいいのです。極端な話、円と線だけの棒人間で人物を表してもいいのです。

ネームで気をつけることは、コマ割り、構図、セリフ、定ページ数以内に話を終わらせられるか、この4つです。あまり話を詰め込むと長尺になりますし、ページ数をオーバーしてしまったり、いつまで経っても起承転結の結が決まらないという罠に陥ります。

漫画家は編集者という相談者がいるので良いですが、プロでない初心者は無駄にページ数の多いネームになりがちです。どこかに連載するならそれでもいいかもしれませんが、ハッキリ言って紙と時間の無駄遣いです。

練習でも賞などに送ることを想定して、16~32ページ以内に話をまとめられるようにしておけば良いでしょう。ストーリーがぐっと引き締まるはずです。

逆に、ネームを膨大に描いて、その中から良い場面を選んでいく方法もあります。その場合、かなりのネーム枚数になるので書き溜めた物語をまとめる編集作業と言ってもいいでしょう。映画の編集の作業と似ていますね。

また、ネームで構図の次に重要なのが登場人物のセリフです。吹き出しに収まるよう簡潔に、でもインパクトのある言葉を入れましょう。これがなかなか難しく、つい説明口調になったりしますが、漫画がスポーツ系であればそれでもかまいません。

セリフが簡素な分構図にこだわったり、構図が簡素な分セリフにこだわったりと、魅せ方はいろいろです。

あと、これは技術的なことですが、ページの終わりのコマは、次のページが気になるように描くと読者を引き付けられます。

例えば、登場人物が主人公に重大なことを告げる時、次ページに続くコマには最後までセリフを書かずに溜めてもったいぶる、思わせぶりな目線を描くなど、「えっ、何?何を言いたいんだろう?」と気を持たせることができます。

漫画にはこういった手法がよく使われます。ただ漫画を描いているだけでなく、読者の事も考えて描いているのです。

漫画の一番のお客様は読み手である読者ですよね。いかに読者を引き付けるか、ネームの段階である程度固めておけば、下描きもスムーズに構成できるでしょう。

デジタルで描く人は、アナログで書いたネームをスキャナで取り込み、そのまま下描きとして流用することがあります。その場合はネームでも丁寧に描いています。原稿用紙はまだ使いません。

あまりラフにネームを描いてしまうと、この技は使いづらいですが、いい構図があったらそこだけスキャンして下描きに組み込むということもできます。

アナログで描く人も、原稿用紙の下にネームを敷き、トレース台と呼ばれるものを使って同じようなことができます。

トレース台とは、電灯の光で紙を透けて見えるようにした台です。大きさによって値段が違ってきますが、漫画家が使うのはA3ほどの大きさで、少し斜めになっているものが多いようです。

トレース台が買えないうちは、昼間のうちに窓を代用して描いたり、中にはテレビやパソコンの光を利用して描き写す(トレース)人もいます。要は光源があって、その上に透明なプレートがあって、原稿を乗せられればOKなのです。