漫画を描いていると、自分の考えた展開になかなか持っていけないことがあります。このキャラクターがこんなことするだろうか?言うだろうか?となってしまうのです。

これを「キャラクターが動く」と言います。ネタに詰まった時はありがたい現象ですが、自分の思い通りに動かないキャラクターに辟易することもあります。

ただ、作者の想像を超えて動きだした時、物語は作者の手を離れ、予想のできない展開をもたらします。描いている方はヒヤヒヤですが、読者は展開が読めずにドキドキするでしょう。

キャラクターが動かない作品は、どこか予定調和、つまりご都合主義な作品になりがちです。作者の思い通りに事が運ぶというのは、読者にも先の展開を読まれる可能性があるのです。

このキャラクターが絶対死んだだろ!という場面でも、何か謎の力が働いて大丈夫でした、となったら何だか興ざめしてしまいますし、いわゆる「主人公補正」が掛かり過ぎて面白くありません。

傷ついたり死んだりしたと見せかけて、後からひょっこり再登場させた方がまだ納得がいきますし、そのキャラクターの人気が高いほど読者の喜びは計り知れません。

しかし、あまりキャラクターに振り回されすぎるのもいけません。物語が膨らみ過ぎて収拾がつかなくなる恐れがあるからです。

途中までは壮大な物語で、どう結末をつけるのか楽しみな読者にとっては、ありきたりな結末はガッカリさせることになります。

それに、作品の神様である作者にとっても勝手に動くキャラクターの暴走をどこかで止めることが必要です。

そのためには、ある程度ストーリーの起承転結を固めておくことです。そうすれば、途中脱線してもある結末に向かってキャラクターが動いてくれます。

たまに脱線しっぱなしでストーリーが進まない漫画も見受けられますが、これは作者が脱線を楽しんでいる、読者もストーリーより脱線が面白くなっている例ですね。

ギャグ漫画に関しては、キャラクターが動きっぱなしの方が面白くなることがあります。予定調和なギャグを見てもあまり面白くないですよね。キャラクターが次に起こす行動が読めないからギャグ漫画は面白いのです。

それでも、暴走させ過ぎてしまえばただのカオスな漫画になってしまい、何が何だか分からなくなってしまうので注意が必要です。

長期連載となると、キャラクターの手綱をしっかり握りつつ、ストーリーの範囲内で動いてもらう、という高等技術が必須になってきます。これは漫画家になって感覚で覚えていくしかないものです。

キャラクターが動かなくても面白い構想がある!というなら良いのですが、なかなかそういうわけにもいきませんよね。ところどころでキャラクターには自分で動いてもらうことこそ、漫画のスパイスだと思います。

キャラクターに動いてもらうには、漫画を描いて描いて描きまくるしかありません。そのためには長いストーリーと設定を固めて挑むといいでしょう。きっと自分のキャラが生き生きしてくる瞬間が出てくるはずです。