斬新な漫画は、受け入れられるか受け入れられないか一種の賭けになりますが、王道漫画ならばネタ的にも受け入れられますよね。

この王道漫画をどこまでキレイにまとめられるか、構図をカッコよく描けるかで漫画家としての力量が測れることがあります。

例えば、勇者が悪者に連れ去られたお姫様を助けに行く物語。ネタ的には使い古されたものですが、同じネタでも描く人が違えば全く別の表情を見せます。

それは絵と構図、そしてセリフです。10人の漫画家に同じストーリーで描いてもらったら、10通りの物語が生まれるでしょう。そのくらい漫画家の個性というのは強いのです。

勧善懲悪のオーソドックスなストーリーが上手く描き起こせれば、他のジャンルの漫画も大抵描けると言っても過言ではありません。

なぜなら、例に挙げたネタでは、バトル、恋愛、心理描写、モンスターなど派生するネタが詰まっているからです。

また、主人公を善側にしなくても、悪役側の視点から描いてもおもしろいですね。なぜお姫様を連れ去ったのか、深く掘り下げていけばおもしろい作品になりそうです。

このように、王道だから避けるのではなく、王道だからこそ描くべきなのです。誰もが安心して読めるブレのないストーリーだから王道と呼ばれるに相応しいネタなのです。

王道ストーリーを描くことで勉強にもなりますし、技術向上にもつながります。また、芯の通ったストーリー展開を身につけることもできます。

その上で斬新なアイディアを上乗せすれば、面白い作品が生まれるでしょう。

それに、今は斬新なアイディアでも、時が経てば誰かに先を越される可能性があります。あまり長く温めずにアイディアはどんどん使っていきましょう。

「構想○年の超大作」という作品が、あまり評判が芳しくなかったりするのはネタを温め過ぎたからです。何事もそうですが、フレッシュなうちに使いたいものです。

しかし、今は斬新なアイディアでも、使い古されるうちに王道の一つになったりします。そこをどう描くかが漫画家の腕の見せ所です。

正統派ストーリーというのはいつの時代でも受け入れられるものです。そこに派手でカッコイイ構図や心に響くセリフ、ストーリー展開があれば、名作の仲間入りを果たすでしょう。

ですが初心者のうちは、実際描き始めると王道ストーリーを面白く見せるのが難しく感じるかもしれません。どこかで見た構図になってしまったり、セリフになりがちだからです。

そこに自分の個性を盛り込んでいけばいいのです。先ほども書いたように、10人の漫画家がいれば10通りの作品が生まれるのですから、ストーリーの芯はそのままに、肉付けは自由なのです。

ストーリーから脱線したまま終わることになっても、それはそういう作品として仕上がっているはずです。いわゆる打ち切りっぽい終わり方をしてもおもしろいですね。そういう展開をネタにしている漫画もあります。

王道は1日にしてならず。とにかくどんどん描いて、技術を向上させていきましょう。