様々な紙媒体がデジタル化されている昨今、漫画も例外ではありません。下描きをスキャナに取り込んでからパソコンでペン入れをする漫画家もいますし、全ての工程をデジタル一本にしている人もいます。

デジタルツールは大変便利です。描き直しも修正も簡単、トーン貼りすらできてしまう他、完成原稿そのものをデジタルで入稿できるのですから。

漫画に必要な道具も、紙とペンその他諸々から、パソコンと描画ソフトとペンタブの3つにまで絞れます。デジタル入稿できない時は、原稿用紙に出力すればいいので楽ちんですね。

では漫画家はほとんどデジタルに移行しているかというと、答えはNOです。

原稿もかさばらず、ペーパーレスでいいんじゃないかと思うかもしれませんが、やはりアナログ、つまり手描きの方が迫力や心理描写がしやすい、今からデジタル化するより熟練した手先の方が仕事が早いという利点があるからです。

漫画家の原画展などに行った人なら分かると思いますが、肉筆の原稿は迫力が違います。ペンの線画やトーンの使い方、修正した跡まで全てが見るものに訴えかける…というのは言い過ぎでしょうか。

一方、デジタル原稿は確かにキレイです。修正跡もありませんし、トーンのズレやベタの塗り忘れもほとんどありません。カラー原稿も色ムラがなく、安心して見れるのですが、どこか平坦に感じます。

こう書くと、手描きを推奨しているようですが、これは個人的な好みです。

やはりこれも人それぞれの好みの問題で、紙の方がいいという人もいれば、デジタル処理の方が効率的だという人もいます。

手描きですと、道具を揃えたり修正が大変だったり、時にはインクを誤って原稿にぶちまけてしまうことだってあります。もうこうなったら1枚描き直しするしかありません。

デジタルだと、道具は全部ソフトの中に入っていますし、手描きではできない表現も可能です。ただ、ソフトの機能を使いこなせないと画面の中で描いているだけの漫画になってしまいます。

効率や修正が楽という問題ではなく、インクの匂いが好きだとか、肉筆だと達成感があるとか、ここぞという時にペンの強弱を使い分けられるとか、デジタルにしない人には色々理由があるのです。

初心者ならデジタルに入りやすいかもしれません。また、デジタル描きに向いてないと思えばアナログに戻せばいいだけのことです。その逆もまた然りです。

ちなみに、デジタルにする場合、ソフトによってはかなり高額になったりします。その代わり多機能で、色々な表現を駆使することができます。

フリーソフトと言って無料のものもあるので、そちらを試してから有償版を買ってみるのもいいでしょう。

どちらも一長一短があるので、こっちがいい!とは断言できません。漫画を描く人の個性と腕次第です。絵柄や漫画のストーリーにも関係してきます。

例えばバトル漫画などはアナログ、ファンタジーや日常系ならデジタル、といった感じでしょうか。これも私見ですが…。