漫画家になって長く連載を続けていると、設定の矛盾が生じることがままあります。最初から最後までプロットが完成している長期連載ならばあまり生まれにくいのですが、そのような漫画は一握りです。

こうしたら展開が面白くなるんじゃないか、とした設定が、初期設定と大きく外れてしまうと、ストーリー自体にも矛盾が発生してしまいます。それは漫画家のみならず、担当編集者のミスとも言えるでしょう。

このようなことが起きないためには、キャラクター設定や世界観のルールが頭になければなりません。

けれど漫画家はいわば漫画の世界の神様ですから、好きなように設定をいじることができるので、矛盾が生まれるまえに伏線を張っておく、後で辻褄を合わせることで矛盾を解消することができます。

伏線はストーリーの中で回収するようにしましょう。読者は好きで作品を読んでいるので、意外と細かいことまで覚えています。あの伏線はなんだったんだ?とならないように、自分の漫画の設定や物語はある程度覚えるか読み返すようにした方が無難です。

突き抜けた漫画家になると、矛盾や伏線回収なんて関係ねぇ!という感じでどんどんストーリーを展開させていきます。単行本になるときに修正するようですが、ストーリーが破たんしない程度の修正だったりします。

たまに物凄い矛盾をはらんだまま単行本化されることもありますが、勢いで描き切る漫画家もいます。矛盾があったとしても、ストーリーとして成立していればOKなのです。

とはいえ、どうせなら伏線回収バッチリの整合性のとれた漫画を読みたいし描きたいですよね。

矛盾を回避するためにどうしたらいいかというと、作品の年表や時系列を描くと分かりやすいでしょう。備考欄などがあれば設定を書き込むことができて設定上の矛盾も避けることができます。

連載となると、最初の設定に加えて主人公が成長したりして、設定の枠を飛び越えた存在になったりします。そんな時に、ここで主人公が新たな技などを覚えた、と書いておけば、いちいち初期設定を見返したりしなくても済みますね。

初期設定で守るべきはキャラクターの性格です。生い立ちや生活環境もそれに準じます。その上で、こういう言動をするとしておかなければ、設定上の矛盾が生じます。

例えば、天涯孤独で両親のことを覚えていないキャラクターが、いきなり自分の母親の話をするのはおかしいですよね。こうなんだと思う、ぐらいならいいですが、「俺の母親はこうだった」というセリフは絶対言わない、言えないはずです。

この場合、後々記憶の改変があったとか、偽の記憶を植え付けられていたなどの話を作ることで修正ができますし、何か重大な秘密の伏線として扱うこともできますが、ちょっと苦しいですね。

漫画がいくら虚構の世界だからと言って、矛盾をほったらかしておくと矛盾が矛盾を呼び、もうワケが分からないことになってしまいます。収拾がつかなくならないように、キャラクターの設定や世界観は一番大事にしておきたいものです。