好きなように絵を描いて、それがそのまま掲載されればこれほど嬉しいことはありません。しかし、漫画家というからには「読者が見るに耐えられるレベル」の画力が必要です。

中には「ヘタウマ」と呼ばれるような、ゆるい絵柄で売り出している人もいますが、あれは基礎ができているからこそできるデフォルメです。

この画力を上げるには、ひたすら絵を描いて腕を上げるしかありません。基礎画力を鍛えるには、何でもいいので「デッサン」することが必要です。

最初は静物画、動かないものをデッサンしましょう。動くものをデッサンするのは少し上級者にならないと難しいものです。わざわざ果物などを買って来なくても、そのへんにあるもので大丈夫です。

写真を模写するのもよいでしょう。これなら人体の構造を把握することもできますし、背景の勉強にもなります。自分の手足を見ながら描くのもいいですね。

手や足というのは構造が複雑ですので、思っているより上手く描けないものです。逆に言えば、手足が上手い絵は安定して見えます。

要は「絵が上手くなりたかったら、目につくものをとにかく描きまくれ!」ということです。とはいえ、ただがむしゃらに描けばよいというわけではありません。

描いたものを見てもらい、おかしな点や修正すべき点を指摘してくれる人が必要です。そういう人がいるだけで、画力が上がる時間がぐんと速くなります。

プロの漫画家だって同じです。編集者から何度も描き直しを言い渡されて、段々と絵が安定してくることがあります。

単行本の巻数が多いもの、20~30巻以上あるものが分かりやすいのですが、1巻目と最終巻の絵を見比べてみると、別人が描いたように上達しているはずです。つまり「画力が上がった」のです。

もちろん、プロになる前は一人で描き続けて客観視できることが大切ですが、一人で描いていると感覚が麻痺してこれでいいのか、何かおかしいけどどこがおかしいのか分からなくなってきます。

そうなってもひたすら描き続け、時には絵の参考書を読み込んだりして、やっと納得するものが描けることがあります。

時にはどんなに苦しんでも全く上達しないこともあります。俗に言う「スランプ」です。絵を生業として目指す人は、ここで挫折することが多いのです。

そういう時は、一旦絵から離れて気分転換することが大事です。そのうちまた描きたくなってきたり、ふとどこがおかしい点なのか分かったりします。

一番良いのは、漫画を描く仲間をつくることです。お互いに切磋琢磨するので相乗効果により画力が上がったり、絵のタッチが変化してくることもあります。

画力が上がると、自分のイメージした通りの構図が描けるようになるので、さらに漫画を描くことがおもしろくなるでしょう。絵が上手い、または味がある漫画家は人気も出やすいものです。

リアルな絵も、漫画も、根本は同じですので、デッサン力が上がれば漫画も自然と安定した、いわゆる「安定した絵」になってくるはずです。挫けずに何十枚、何百枚と絵の練習をしましょう!