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子供から老人まで、描ける年齢層の幅を広げよう

キャラクターの描き分けは大事だと書きましたが、その中でも描ける年齢層を広げるのはストーリーの幅を広げるのに役立ちます。

よくありがちなのが、ほうれい線を書き足しただけの中年男性やシワシワなのに目や口は若者と同じという絵です。

確かにシワは老いを表す記号ですが、人間歳を取れば目鼻立ちも変わってきます。シワだけ描けばいいというものではありません。

逆に若年層、例えば幼児を描く時も同じことが言えます。単に丸っこく描けば幼児に見えるわけではありません。

子供にはいくつかの特徴があります。頭が大きい、顔に対して目が大きい、鼻が低い、顔のパーツがやや中央寄りである、などです。

絵に描く場合、顔の横のアタリより目を下側に大きく描くと子供っぽくなります。鼻は小さく描く、または省略します。

逆に大人や老人の場合、横のアタリを起点にするか、やや上寄りだと大人っぽくなります。

老人を描く場合のシワですが、顔の稼働域からシワが刻まれると考えましょう。それから歳を取るごとに皮膚がたるみ、少し下がることを考慮すると、より老人らしくなります。

また、年齢によってパーツの見せ方も変わってきます。例えば歯などは、口を開いた時に上の歯が見えると若年、下の歯が見えると老年、という描き方があります。口の皮膚がたるむことにより、見える歯が違ってくるのです。

老人の場合は歯の抜け具合や黒い歯などを書き込むとよりリアリティが増します。

このように、子供から老人まで描ける年齢層が広がると、キャラクターの幅も広がります。ある一定の年齢層しか描けないと、若者ばかりが登場する漫画しか描けなくなります。

シワの多い老人キャラクターは描き込みが大変ではありますが、そういう重鎮的存在は、重要なキャラクターだったりしますよね。

年齢は重ねていても外見は若いまま、という設定でも良いのですが、やはりメリハリをつけるためには色々な年齢層のキャラクターが出てきた方が面白くなります。

渋いおじ様やシワの深さが経験の深さを表している長老など、若さでは出せない凄みや落ち着きを紙上で表現できるのです。

また、若者でも怒ったりするとシワが寄りますよね。悲壮な変顔など、シワを自由に描けると喜怒哀楽の表現の仕方が広がります。

このように、シワとは老人キャラクターだけのものではないのです。つるんとしシワひとつない顔というのは、人形か無表情キャラクターだけです。無表情キャラクターだらけの漫画というのはないですよね。

漫画だから登場人物全員人形のようなものだと言われればそれまでですが、ちょっと単調な場面ばかりになってしまいます。日常系漫画や萌え漫画なら問題はないですが、それでもインパクトは確実に欠けます。

シワの描き方ひとつでキャラクターに魂を吹き込むことができると考えれば、シワは忌むべきものではなく、必要なものであると思うことができるでしょう。

自分の考えたキャラクターに、ぜひ色んな表情をさせてください。

斬新さも大切だけど…王道漫画を描こう!

斬新な漫画は、受け入れられるか受け入れられないか一種の賭けになりますが、王道漫画ならばネタ的にも受け入れられますよね。

この王道漫画をどこまでキレイにまとめられるか、構図をカッコよく描けるかで漫画家としての力量が測れることがあります。

例えば、勇者が悪者に連れ去られたお姫様を助けに行く物語。ネタ的には使い古されたものですが、同じネタでも描く人が違えば全く別の表情を見せます。

それは絵と構図、そしてセリフです。10人の漫画家に同じストーリーで描いてもらったら、10通りの物語が生まれるでしょう。そのくらい漫画家の個性というのは強いのです。

勧善懲悪のオーソドックスなストーリーが上手く描き起こせれば、他のジャンルの漫画も大抵描けると言っても過言ではありません。

なぜなら、例に挙げたネタでは、バトル、恋愛、心理描写、モンスターなど派生するネタが詰まっているからです。

また、主人公を善側にしなくても、悪役側の視点から描いてもおもしろいですね。なぜお姫様を連れ去ったのか、深く掘り下げていけばおもしろい作品になりそうです。

このように、王道だから避けるのではなく、王道だからこそ描くべきなのです。誰もが安心して読めるブレのないストーリーだから王道と呼ばれるに相応しいネタなのです。

王道ストーリーを描くことで勉強にもなりますし、技術向上にもつながります。また、芯の通ったストーリー展開を身につけることもできます。

その上で斬新なアイディアを上乗せすれば、面白い作品が生まれるでしょう。

それに、今は斬新なアイディアでも、時が経てば誰かに先を越される可能性があります。あまり長く温めずにアイディアはどんどん使っていきましょう。

「構想○年の超大作」という作品が、あまり評判が芳しくなかったりするのはネタを温め過ぎたからです。何事もそうですが、フレッシュなうちに使いたいものです。

しかし、今は斬新なアイディアでも、使い古されるうちに王道の一つになったりします。そこをどう描くかが漫画家の腕の見せ所です。

正統派ストーリーというのはいつの時代でも受け入れられるものです。そこに派手でカッコイイ構図や心に響くセリフ、ストーリー展開があれば、名作の仲間入りを果たすでしょう。

ですが初心者のうちは、実際描き始めると王道ストーリーを面白く見せるのが難しく感じるかもしれません。どこかで見た構図になってしまったり、セリフになりがちだからです。

そこに自分の個性を盛り込んでいけばいいのです。先ほども書いたように、10人の漫画家がいれば10通りの作品が生まれるのですから、ストーリーの芯はそのままに、肉付けは自由なのです。

ストーリーから脱線したまま終わることになっても、それはそういう作品として仕上がっているはずです。いわゆる打ち切りっぽい終わり方をしてもおもしろいですね。そういう展開をネタにしている漫画もあります。

王道は1日にしてならず。とにかくどんどん描いて、技術を向上させていきましょう。

漫画の核は絵だけじゃない!名ゼリフを考えよう

かっこいいキャラクターやかわいいキャラクターが見られるのが漫画のいいところですが、漫画の魅力はそれだけではありません。

それはズバリ「名ゼリフ」!漫画を読んでいたら、心にグッとくるセリフやなるほどなあと考えさせられるセリフに出会いますよね。

かっこいいキャラクターがそんなセリフを言ったら、更にキャラクターに深みが出ます。逆に差しさわりのないことばかりをキャラクターが話していたら、せっかくの物語が薄っぺらいものになってしまいます。

このセリフというのは非常に大事で、時には名言として語り継がれるほど読者の心に残ります。

どのキャラクターにどんなセリフを言わせるか、漫画家の腕の見せ所とも言えます。

主なキャラクターに言わせるのは定石ですが、脇で目立たないキャラクターが急に重い言葉を言うのもドキっとします。

それぞれのキャラクターのバックボーンや主義などを考慮して、「言わせる」のではなく「このキャラクターだったらこう言うだろうな」と考えれば、自ずとセリフが浮かんでくるはずです。

言い回しや言葉を選ぶのも大事です。同じ意味でも言い回しによればとてもいいセリフになったりします。

逆に、誤植や素っ頓狂なセリフも時として迷セリフとしてウケることもあります。いつの間にかネットスラングとして広まったセリフもあります。ほとんどが漫画発祥のもので、漫画の影響はすごいのだなあと感心します。

そう深く考えなくても、漫画を描いていれば不思議と思い浮かんできます。それに、吹き出しの大きさの制限で、あまり長ったらしいセリフは書けないということもあります。

だから漫画のセリフは頭や心に飛び込んできやすい、いわば「言葉の結晶」と言っても過言ではないでしょう。

この言葉の結晶は、時に読者に衝撃を与えることがあります。それまでの生き方や思考、信念に大きな影響をもたらすのです。

言葉には言霊と言って、力が宿ることがあります。ましてや漫画に書かれているのは極限まで研ぎ澄まされた言葉。影響があって然りなのです。

気をつけたいのが、セリフが長々と説明口調になってしまうことです。ストーリーによっては解説せざるを得ないこともありますが、できれば絵の方で分かるようにしましょう。

人物に説明させるのは好ましくありません。吹き出しがものすごく幅を取ってしまい、一コマを吹き出しに占領されてしまうからです。

漫画なのに説明セリフが多くなってしまったら、小説のようになってしまいますよね。せっかくの漫画なのですから、説明は絵で、そしてシメは名ゼリフでカッコよく決めたいものです。

それでも言葉が思い浮かばない時がありますよね。クライマックスに相応しいセリフがどうしても思いつかない、グッとくるセリフを入れたいけど思いつかないなど。

そういう時は、原稿を最初から読み返してみましょう。作者である自分自身が、物語についていっていないので言葉が思いつかないのです。

そんな馬鹿な、と思うでしょうが、描くことに専念しているのでストーリーが頭に残っていない場合もあります。

ストーリーと設定の読み返しで、キャラクターが話す言葉も浮かんでくるはずです。

連載の罠…ストーリーの矛盾発生

漫画家になって長く連載を続けていると、設定の矛盾が生じることがままあります。最初から最後までプロットが完成している長期連載ならばあまり生まれにくいのですが、そのような漫画は一握りです。

こうしたら展開が面白くなるんじゃないか、とした設定が、初期設定と大きく外れてしまうと、ストーリー自体にも矛盾が発生してしまいます。それは漫画家のみならず、担当編集者のミスとも言えるでしょう。

このようなことが起きないためには、キャラクター設定や世界観のルールが頭になければなりません。

けれど漫画家はいわば漫画の世界の神様ですから、好きなように設定をいじることができるので、矛盾が生まれるまえに伏線を張っておく、後で辻褄を合わせることで矛盾を解消することができます。

伏線はストーリーの中で回収するようにしましょう。読者は好きで作品を読んでいるので、意外と細かいことまで覚えています。あの伏線はなんだったんだ?とならないように、自分の漫画の設定や物語はある程度覚えるか読み返すようにした方が無難です。

突き抜けた漫画家になると、矛盾や伏線回収なんて関係ねぇ!という感じでどんどんストーリーを展開させていきます。単行本になるときに修正するようですが、ストーリーが破たんしない程度の修正だったりします。

たまに物凄い矛盾をはらんだまま単行本化されることもありますが、勢いで描き切る漫画家もいます。矛盾があったとしても、ストーリーとして成立していればOKなのです。

とはいえ、どうせなら伏線回収バッチリの整合性のとれた漫画を読みたいし描きたいですよね。

矛盾を回避するためにどうしたらいいかというと、作品の年表や時系列を描くと分かりやすいでしょう。備考欄などがあれば設定を書き込むことができて設定上の矛盾も避けることができます。

連載となると、最初の設定に加えて主人公が成長したりして、設定の枠を飛び越えた存在になったりします。そんな時に、ここで主人公が新たな技などを覚えた、と書いておけば、いちいち初期設定を見返したりしなくても済みますね。

初期設定で守るべきはキャラクターの性格です。生い立ちや生活環境もそれに準じます。その上で、こういう言動をするとしておかなければ、設定上の矛盾が生じます。

例えば、天涯孤独で両親のことを覚えていないキャラクターが、いきなり自分の母親の話をするのはおかしいですよね。こうなんだと思う、ぐらいならいいですが、「俺の母親はこうだった」というセリフは絶対言わない、言えないはずです。

この場合、後々記憶の改変があったとか、偽の記憶を植え付けられていたなどの話を作ることで修正ができますし、何か重大な秘密の伏線として扱うこともできますが、ちょっと苦しいですね。

漫画がいくら虚構の世界だからと言って、矛盾をほったらかしておくと矛盾が矛盾を呼び、もうワケが分からないことになってしまいます。収拾がつかなくならないように、キャラクターの設定や世界観は一番大事にしておきたいものです。