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もしも漫画家になれたら…どんな漫画を描きたい?

漫画家になったら、こんな漫画が描きたい!と漫画家を目指している人なら誰しも思いますよね。

メッセージ性の強いものを描きたい、読んでて元気の出る漫画が描きたい、ヒット作を生み出して儲けたいなどなど。

動機はなんでもいいのです。その動機が強ければ強いほど、漫画を描くモチベーションに繋がります。

だたし、新人の頃は自分の描きたい漫画が必ずしも描けるとは限りません。編集者との話し合いで方向性の違う漫画を描くことになったり、自分のネタを絞り出してようやく1作品が完成したり…。

出版社も人気と儲けが欲しいので、納得できる形にならなければダメ出しを食らうのです。

ですが、読み切りや短編を描くことによって、そこから新しい漫画が派生することもあります。漫画家の短編集を読んでいて、あ、この設定はあの作品に活かされてるんだ、と気づくこともあるでしょう。

漫画家はいきなりスゴイ構想をバーンと描いているわけではありません。中にはそういう天才肌の漫画家もいるかもしれませんが、ほとんどが色々考えて、良い設定を拾って作品に練り直しているのです。

そうしてやっと、自分の描きたい漫画を描けるステージに上っていくのです。

よほど売れっ子かベテラン作家でないと、自分の好きなように描くことは難しいでしょう。ですから、最初はぐっとこらえて知名度が上がるまで読者にウケる漫画を描いていく必要があります。

自分の描きたいものと違う漫画を描くのは苦痛が伴うかもしれませんが、それが漫画家という職業です。とにかく描いて描いて認められてナンボの世界ですので、どの漫画家もそういう辛酸を舐めているはずです。

でも、作品を面白い、と思ってくれる人、ファンが増えて来ると嬉しいものです。もっと違う世界観を描きたいと思っていても、作品に力を注いでいる間は、少なからず読者に影響を与えています。

切ないラブストーリーに共感する人、どんな苦難にもあきらめない主人公に心打たれる人、作者が意図しないところで感銘を受けているかもしれません。

だからこそ、どんな作品であろうとも手が抜けないのです。これはもう全ての漫画を描く人にとって重要なことです。

アマチュア時代は自分も楽しく描けて読者も楽しいという世界から、プロになると読者を楽しませるエンターテイナーに昇格します。もちろん、描いていて楽しいと思う漫画家もいます。苦しいだけが漫画ではないのです。

むしろ、苦しさは作品に如実に出てしまいます。何かストーリー運びがおかしいな、絵が平坦だな、と感じる時は、確実に作者が苦し紛れに筆を進めている時です。

やはり作者の気分が乗らない作品は読者が見ても乗らないまま終わってしまいます。

とはいえ、漫画家の良い所は「作品について相談できる担当」がいることです。大抵の漫画家には担当編集者が付き、作品の方向性からネームまでチェックが入ります。

「これこれこういうことで作品について悩んでいる」と相談すれば、何十本何百本と漫画を見てきた担当者が意外な答えを返してくれるかもしれません。それをヒントにスランプを打開する漫画家もいるようです。

担当者というと、「原稿まだですか」と急かすだけのイメージが強いですが、結構漫画制作に関わってくるのです。9割方は漫画家の自由に描かせてくれますが、ダメな場合は軌道修正してくれます。

担当者と漫画家はある程度二人三脚で漫画を作っていると言っても過言ではないでしょう。

その上で、自分の描きたいもの、伝えたいことを上乗せしていきましょう。

ギャグ?シリアス?ストーリーの方向性を定めよう

ストーリーの方向性を決めるのは意外と難しかったりします。ガチガチのシリアスにするか、ギャグにしてしまうか。

特にギャグ漫画はセンスが問われます。ツッコミ役のキャラクターのツッコミがパンチが弱いとただの面白くない漫画になりますし、無意味にギャグを展開させると収拾がつかなくなります。

その点、シリアスは筋が通っているので、描きやすいと言えば描きやすいですね。その代わり世界観や設定の練り込みが不可欠ですが。

シリアスがド直球のストレート球なら、ギャグはどこに跳ねるか分からない、そもそもミットに収まるかも分からないゴム球のようです。

シリアスなストーリーにギャグを散りばめる手法もありますが、これは上級者向けかと思います。どこで緩急をつけるか非常に難しいからです。ギャグ色が強いとストーリーが進まないし、シリアス色が強いとギャグを入れる余地が狭くなってしまうからです。

連載となると、この方向性が定まらなくなることがよくあります。なぜかというと、漫画家というのは人気商売で、読者のウケが悪いとすぐ打ち切られてしまうからです。

最初はシリアス路線だったのに、途中からギャグになったりスポーツものになったり迷走し始める漫画も見受けられます。人気回復しようとして、路線変更を余儀なくされたパターンですね。

ある漫画雑誌では、人気が落ちてきたらバトルを入れたらいい、というジンクスが存在します。やはり読者層によって、見たい漫画の路線が決まってくるようです。

なら最初からバトルものにしたらいいと思うかもしれませんが、作者が描きたかったものと内容が剥離してしまうという罠があります。そういう場合は雑誌を移るしかないのですが…。

路線変更にならないためにも、掲載する雑誌選びというのは大事です。少年漫画に少女漫画を、少女漫画に少年漫画を入れることができないように、読者層や雑誌のカラーというのは掲載作品に色濃く出ています。

そのため、自分の作品はどの方向性でどういったジャンルのものか知る必要があるのです。

最初から自分の好きなように描いて好きなように終わりたい、というならば、自費出版、いわゆる同人誌にするという手もあります。

同人誌というとアマチュアの作家が描いているというイメージがありますが、ある程度知名度のある漫画家が、好きなように描けるから同人誌という形式で描くこともあります。

同人誌にはオリジナル作品は売れない傾向がありますが、知名度のある漫画家には固定ファンがいるので、売れ残る心配は少ないでしょう。

とはいえ、せっかく雑誌に掲載される作品が思うように描けないのはツラいですよね。そうならないために、雑誌の路線傾向、読者層を念頭に置いて、作品の方向性をガッチリ決めたいものです。

方向性はブレなくても、そこに至る過程をどう描くか、読者層に受けるか否か、漫画家に悩みは尽きません。シリアスともギャグともとれないぼんやりとした作品を描くことだけは避けたいですね。

キャラクターが動き出す!?漫画を描いていてありがちなこと

漫画を描いていると、自分の考えた展開になかなか持っていけないことがあります。このキャラクターがこんなことするだろうか?言うだろうか?となってしまうのです。

これを「キャラクターが動く」と言います。ネタに詰まった時はありがたい現象ですが、自分の思い通りに動かないキャラクターに辟易することもあります。

ただ、作者の想像を超えて動きだした時、物語は作者の手を離れ、予想のできない展開をもたらします。描いている方はヒヤヒヤですが、読者は展開が読めずにドキドキするでしょう。

キャラクターが動かない作品は、どこか予定調和、つまりご都合主義な作品になりがちです。作者の思い通りに事が運ぶというのは、読者にも先の展開を読まれる可能性があるのです。

このキャラクターが絶対死んだだろ!という場面でも、何か謎の力が働いて大丈夫でした、となったら何だか興ざめしてしまいますし、いわゆる「主人公補正」が掛かり過ぎて面白くありません。

傷ついたり死んだりしたと見せかけて、後からひょっこり再登場させた方がまだ納得がいきますし、そのキャラクターの人気が高いほど読者の喜びは計り知れません。

しかし、あまりキャラクターに振り回されすぎるのもいけません。物語が膨らみ過ぎて収拾がつかなくなる恐れがあるからです。

途中までは壮大な物語で、どう結末をつけるのか楽しみな読者にとっては、ありきたりな結末はガッカリさせることになります。

それに、作品の神様である作者にとっても勝手に動くキャラクターの暴走をどこかで止めることが必要です。

そのためには、ある程度ストーリーの起承転結を固めておくことです。そうすれば、途中脱線してもある結末に向かってキャラクターが動いてくれます。

たまに脱線しっぱなしでストーリーが進まない漫画も見受けられますが、これは作者が脱線を楽しんでいる、読者もストーリーより脱線が面白くなっている例ですね。

ギャグ漫画に関しては、キャラクターが動きっぱなしの方が面白くなることがあります。予定調和なギャグを見てもあまり面白くないですよね。キャラクターが次に起こす行動が読めないからギャグ漫画は面白いのです。

それでも、暴走させ過ぎてしまえばただのカオスな漫画になってしまい、何が何だか分からなくなってしまうので注意が必要です。

長期連載となると、キャラクターの手綱をしっかり握りつつ、ストーリーの範囲内で動いてもらう、という高等技術が必須になってきます。これは漫画家になって感覚で覚えていくしかないものです。

キャラクターが動かなくても面白い構想がある!というなら良いのですが、なかなかそういうわけにもいきませんよね。ところどころでキャラクターには自分で動いてもらうことこそ、漫画のスパイスだと思います。

キャラクターに動いてもらうには、漫画を描いて描いて描きまくるしかありません。そのためには長いストーリーと設定を固めて挑むといいでしょう。きっと自分のキャラが生き生きしてくる瞬間が出てくるはずです。

下手でも良い、心に残る漫画を描こう

ごく稀にですが、この画力で漫画家になれるんだなぁ…と思うような絵を描く漫画家もいます。ただし、それ以上に構成力とストーリーが素晴らしかったりします。

逆にストーリーや展開に突っ込みどころが多くて、なんだか忘れられないという漫画もあります。

例えば、デビュー作は漫画家としてまだまだ粗削りな部分がありがちです。しかし、その荒っぽさや泥臭い部分がとても印象に残る場合もあります。

何作かこなしてきて、粗削りな部分がなくなり、画力も向上していく漫画家がほとんどですが、インパクトとしてはデビュー作が一番なことがあります。

個人的に、洗練された漫画よりは、泥臭さが前面に出た漫画の方が好きです。あくまで個人的感想ですが…。

また、パッと見下手な絵でも、笑顔の描き方など部分部分が良いと、かなり印象に残ります。この絵からこんな素敵な笑顔が、または悲壮な顔が描けるのか!と漫画家の凄さの片鱗が見え隠れするのです。

デビュー作というのは、売れるまでアシスタントがつかなかったりします。ですから、連載の場合、ある程度人気が出るまで漫画家一人で描くことになります。

漫画家一人で全部仕上げるのは本当に大変な作業で、血と汗と涙の結晶が漫画に詰め込まれているのでインパクトがあるのでしょう。これはデビュー作、新人漫画家ならではのものです。

ある程度経験をこなし、アシスタントがつくことで漫画家の負担は軽減しますが、インパクトという点では少し薄れていくような気がします。絵で魅せるよりストーリーを重視するからです。

時には両方こなす凄い漫画家もいますが、かなり限られてくるでしょう。

悪い方に印象を残す漫画もあります。絵の荒さだけでなく、ストーリーの荒さが目立つものはかなり印象に残ってしまいます。

そういう漫画が売れることはないのですが、何か引っかかる、腑に落ちないものを残して終わる場合もあります。

連載打ち切りよりも、読み切りの作品でそういったものが多い傾向にあります。

読み切りは限られた枚数で話を完結させなければならないため、連載よりも話が濃くなります。

しかし、そんな短い話の中でいくつもの矛盾やツッコミどころが見つかると、読者は「!?」となり、毒にも薬にもならない漫画よりも惹きつけられていきます。

漫画家としてはあまりよろしくないことですが、読者にインパクトを与え、漫画家が育っていく過程を見られるという点ではある意味楽しみではあります。

よくできた作品でも、読者に何の印象も与えられないものもあります。原因としては恐らく、ストーリーが平坦である、キャラクターに魅力がない、あるいは伝えきれていない、といったことが考えられます。

画力不足でも、ストーリーがまとまっていなくても、ドンと心に来る一コマがあれば最強と言っても過言ではないでしょう。

良くも悪くも、読者の心に残った時点で漫画家の勝ち(?)なのです。そんな作品を残していきたいものですね。